Dグレ奮闘記
ラビは無責任だった。
いきなり子猫を拾ってきたかと思えば、それを預けて次の任務へ旅立った。
子猫を押し付けられた神田は、不機嫌だった。
アレン、というらしい。
生意気な子猫だった。
「神田~、お腹すいた…」
そう鳴いては、餌の入った箱をひっくり返した。
ひっくり返しても尚餌がもらえないと分かると、今度は水の入った容器をひっくり返した。
怒鳴って叱ると、目を潤ませた。
時々部屋の外まで響くような声を上げて泣いた。
そのせいで、神田は悪人扱いされた。
「ねむ……」
大欠伸をして、アレンは勝手にベッドの中に潜り込んだ。
勝手に。
しかも真ん中に。
邪魔で仕方がない。
寝床を奪われ、渋々床で眠る。
すると、その背にアレンが擦り寄ってきた。
寝返りを打つこともかなわず、翌朝は筋肉痛だった。
「行くの?」
何度かアレンを残して部屋を出ることがある。
そんな時、アレンは決まって寂しげに袖を掴んだ。
酷い時は、コートにしがみ付いてズリズリとどこまでもついてきた。
本当に邪魔だったが……
「神田、」
無邪気に笑う姿には癒された。
気付かないうちに、愛着が湧いていた。
ラビが帰ってくる前に、神田は任務で本部を後にした。
その間、アレンはコムイの元に預けられたが、すぐに脱走してしまった。
本部から抜け出したアレンは、何の手がかりもなく走った。
その前を金色のゴーレムが飛んでいく。
とりあえず、その後を追って森に入った。
暗い森。
地面は湿り、いびつな形の根が飛び出し、アレンの足を絡め取る。
何度も転び、アレンはようやく人の姿を見つけた。
ゴーレムは、その人の頭にとまっている。
アレンはいそいそと、その人に近づいた。
神田ではなさそうだった。
少し、残念だった。
「…なんだ、お前」
赤い髪の、目つきの悪い人だった。
タバコをふかしている。
アレンの首をきつく掴むと、まじまじと姿を見つめた。
「アレン」
恐々と自己紹介だ。
小さなアレンを、彼は抱き上げた。
適当な倒木に腰掛け、彼は煙を吐いた。
煙の端を吸い込んだアレンがむせる。
赤毛の人は、タバコの火を消した。
「…いくつだ」
「っ…しらな……っ分かんない…」
呼吸を整え、アレンはごろんと腹を出した。
赤毛の彼はクロスといった。
アレンはしばらく、クロスの膝の上で眠った。
どれぐらい走ったのか分からないが、疲れていた。
アレンの頭を、クロスが撫でた。
大きな手だった。
気持ちよかった。
それなのに、目が覚めたらそこは見知らぬ場所だった。
馬小屋のようだった。
床には藁も落ちている。
怖くて仕方なく、アレンは姿勢を低くしたまま体を起こした。
じりじりと後退り、尻が壁に突き当たる。
はっとして、アレンはその場で小さく、平たくなった。
そこに、足音が聞こえてきた。
びくびくとアレンは怯える。
誰だろう。
見つかったら、どうなってしまうのだろう。
怒られるのか、殴られるのか、殺されるのか。
恐怖が募れば募るほど、悪い予感がしてくる。
少しずつ、少しずつ迫ってくる足音に、鼓動は胸を打ち破りそうだった。
体は震え、ノドが乾き、自然と呼吸が荒くなる。
そしてついに、扉の軋む音がした。
「……あれぇ、アレン?」
木製の扉が開いた途端、聞いたことのある声が聞こえた。
燃え盛る緋色の髪に、マフラー。
「ラビぃっ」
一気に涙が溢れた。
安心した。
「どうした、何でこんなところに?」
胸元に飛び込んできたアレンを、ラビはしっかりと抱きしめてくれた。
頭をたくさん、撫でてくれた。
ぽろぽろと零れる涙を、ラビは次々と拭ってくれる。
頭にキスも落としてくれた。
「ラビ、ラビ…」
頬をすり寄せるアレンに、ラビは微笑を見せる。
小さな体に最早震えはなく、安心しきっていた。
「ラビ…ここどこ……?」
小さな爪がコートを掴む。
抱きつきながら、激しく頬擦りを繰り返していた。
「ここ?本部の近くさ」
「ふぅん……」
小さな声で、アレンは溜息を零した。
神田を探して走ったはずなのに、とても長い間走っていたように感じていたのに、実際はそうでもなかった。神田は見つからなかった。
けれど、それでも良かった。
ラビに会えた。
アレンはそっと目を閉じた。
今度は大丈夫。
ラビはこんなにも、しっかりと抱きしめてくれる。
目が覚めても、ラビが傍にいてくれる。
何も恐れることはない。
なにも。
ラビは神田の部屋に勝手に入り込んだ。
アレンの生活用品がすべて神田の部屋にあるからだ。
適当な荷物を神田の部屋に持ち込んで、ラビは生活をはじめた。
「神田は、いつ帰ってくるの」
「ん~……ユウのことだから、ちゃっちゃと片付けて帰ってくるんじゃないかな」
ベッドの上で、ラビはアレンを膝に乗せている。
ラビの腰を跨いで座っているアレンは、ラビの眼帯に触れたがった。
やんちゃな盛りだ。
何もかもが気になっている。
ラビはアレンの両手首を掴み、リズムを取って動かした。
楽しそうに笑うアレンは、ラビのことが大好きだ。
神田のことも、もちろん。
夜になると、ラビはアレンを胸に抱いて眠った。
ラビの髪が、アレンの耳に触れる。
敏感な耳は髪の些細な感触にすら、びくりと動いた。
「……ラビ…」
やけに、眠れない。
アレンは何度も寝返りを繰り返し、ラビと向き合ったり、ラビに背を向けたりした。
「どうした……」
眠そうな声だ。
アレンは尻尾を振り、ラビの腰に打ち付けた。
「こらこら」
「ぁんっ、もうっ」
ラビに尻尾を掴まれ、アレンは抗議の声を上げる。
尻尾に触られるのは、あまり好きじゃない。
ぶんぶんと尻尾を動かしてみるのだが、ラビは放してくれなかった。
「やだぁっ…」
「…何、色っぽいな、アレン」
思わず漏れた甘ったるい声に、ラビは揶揄する。
頬を膨らませ、アレンはそっぽを向いた。
「ラビなんて知らない……。」
窓の向こうに、月が浮かぶ。
アレンは硬く目を閉じた。
神田が帰って来た。
アレンは嬉しそうに飛びついた。
気が済むまで甘え、渋面を作る神田から離れなかった。
「お帰りっ」
「……おう」
神田は疲れているようだった。
あまりアレンに構わず、眠ってしまった。
ラビと顔を見合わせ、残念、と肩を竦める。
「起きろよ、ユウ」
「うるせぇ」
頭の上まで毛布に包まり、素っ気ない。
ベッドの端に腰掛け、ラビはアレンを手招きした。
「一緒に寝よう」
「…うん」
急にベッドが狭くなった。
神田が嫌そうに体を揺らす。
アレンは神田の胸元にしっかりと入り込み、ラビは神田の背にぴったり寄り添った。
再びの筋肉痛が、翌朝神田を襲うだろう。
アレンを連れて、散歩に出た。
元気に走り回るアレンの後をラビがゆっくりと歩み、その後を神田が渋々と歩いた。
「ラビっ」
くるりと振り向いたアレンは、暖かな空気の中で朗らかに笑った。
開けた原っぱを駆け巡る姿が可愛くてしょうがない。
ラビの顔は緩みっぱなしだった。
「神田、」
ぱあっと笑ったアレンが駆け戻ってくる。
神田はアレンの体を抱きとめた。
愛らしいアレン。
無意識のうちに、神田の顔に笑みが浮かんだ。
それを見て、ラビも笑みを深くする。
アレンはただ、無邪気に頬擦りを繰り返した。
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風邪をひいたようです。
頭痛が・・・。
奮闘記は挫折してしまいました・・・。
ひたすらの可愛らしさを追求しながらエロくならないようにしようと思ったのですが、難しい・・・。
精進します。
ではでは。
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