鋼錬Ice


Ice


 触れたくて、仕方なかった。
 目の前にある、涼しげな顔に。
 なぜなら、
「現在の気温38℃~っ!?」
 温度計を手に素っ頓狂な声を上げたのはエドだった。
 その姿を横目に、ロイは鼻で笑う。
 温度とは縁遠い男だ。
 涼しげな顔をして、腕を組んでいる。
「行くぞ…」
 エドが一体どこから温度計を取り出したのか気にもとめず、ロイは歩いていく。一瞬むくれたエドだが、炎天下に立ち続ける気もなく大人しく歩き出した。
 その目はひたすら、広い背を見つめる。
 涼しそうな男。
 ポーカーフェイスで、感情も滅多に表に出さない。
 だからこそ、気になる事がある。
 『本当』のことだ。
 本当は暑いのではないか。
 本当は何か感じているのではないか。
 本当は……。
「どうした。」
 振り向いたロイが問う。
 エドは首を横に振った。
「別に…暑くないのかなぁ、と思って。」
「…暑いに決まっているだろう?」
 何を馬鹿なことを。
 小さく声には出さずに唇を動かす。
 カチンとしたが、怒れば余計に暑くなる。
 無理に自分を宥め、エドは歩を進めた。
 突然呼び出しておいて用件も言わず、その上一言多い。
 癇に障る奴だと思った。
 だから、人目を気にせず後ろから飛びついた。
「…何か用かね」
 平坦な声。
 胸に両腕を回されて、ロイは冷たくエドを見下ろした。
 エドは気にしなくても、ロイは人目を気にすると思ったのだが、思惑は呆気ないほどに外れてしまった。
 逆にエドが恥をかいている。
 赤くなり、エドはロイから離れた。
「別に…」 
 隣に並び、歩き始める。
 ロイは眉を寄せていたが、何も言わずに小さな溜息を零しただけだった。
 目的地も知らず歩いていくエドを、ロイはあっと言う間に抜き去っていく。
 歩幅の違いが、悔しい。
 いや、全てにおいて悔しい。
 ロイはいつでも余裕綽々で、エドを鼻で笑う。
「……俺はいつでも置いてけぼりだな…」
 消え入りそうな声に、ロイは振り向かなかった。

 静かなホテルに、エドはいる。
 だらしなく服を脱ぎ捨てて、ベッドの上だ。
 ロイはゆったりとソファに座り、新聞をひろげていた。
 ふたりの間に会話はない。
 何度かホテルに入った理由を聞こうと思ったが、わざとらしく遮られてしまう。既に諦めているエドだ。
「……寝て、帰るだけじゃないだろうな…」
 冗談じゃない。
 わざわざ寝るためだけにホテルに入ったというのならば、ロイもご乱心だ。
 新聞に集中しているのか、ロイは口を開こうともしなかった。
――暇だなぁ…。
 窓から入ってくる夕方の風は、ひんやりとして気持いい。
 既に太陽は沈み、薄暗かった。
 ロイを横目に見たあとで、エドは目を閉じる。
 分からない人だよ、まったく。
 心の中で、愚痴を止められない。
「………。」
 さらさらのシーツが気持いい。
 エドはベッドになついて、身体を思いっきり伸ばした。
「…ぁ……」
 細い声が漏れる。
 そのことに、エド自身は気付いていなかった。
 伸びをしたあとで、シーツに頬を擦り付ける。
 枕を抱き締め、身体を丸めた。
――もっと…かまってくれてもなぁ…。
 いつになく甘えたがる自分がいる。
 そんな関係でもないに関わらずだ。
 昼間の行動。
 自分でも信じられなかった。
 どうして抱きついたりしたのだろう。
 本当は、ロイの注意を引きたかっただけで、恥ずかしい思いをさせたいわけではなかった気がする。
 弱くなったと思った。
 人に甘えたがる自分は、なんだか弱い気がした。
「…鋼の」
 突然呼ばれる。
 その頃にはもう、瞼が重かった。
「何…」
――ああ、そういえば…べっどはひとつしかなかった……。
 今更気付いた。
 ベッドがきしんで、ロイが乗り上げてきたことが分かる。
 まあ、いいか。
 そんな気がした。
 今夜は少し、肌寒くなりそうだし、ソファで寝る気もない。
 それに、運がよければ甘えられる。
 偶然を装って。
「……もう寝るのか?」
 大きな手が、髪を撫でた。
 柔らかな手つき。
 子供扱いされている。
 でも、嬉しい。
「…さあ…」
 髪の次は頬を撫でられた。
 顎や首筋も撫でられる。
 うっすらと開いたエドの瞳が、すぅっと朱みを増した。
 わずかに潤んで、艶っぽい。
「おいで」
 ロイはエドの頭を、自らの膝に乗せた。
 膝枕だ。
 気付いた時には、エドの頭は疑問だらけだった。
 どうして、こんなに甘やかされているのだろうか。
 エドが怒る行為と知って、ロイは頭を撫でたりする。
 いつものように怒らないことをからかいもしない。
「…名前、呼んでよ…」
 しかも無意識のうちにおかしなことまで言ってしまう自分がいる。
 慌てて、エドは口を開いた。
「…やっぱいい…変だ…なんか、今日は…変だ…」
 それに対して、ロイは相変わらずの口調で答えた。
「そうだな。暑かったから…」
 そうではない。
 反論しようとしたが、口の中に何かが入ってきた。
「んっ…ふ……」
 ロイの指だった。
 なぜか甘い。
 驚くエドがロイを見上げると、ロイは真剣な顔をしてエドの瞳を見据えた。
 抵抗ができなくなる。
「舐めるんだ。」
「…ぁ…んぅ…」
 口の中で指が動く。
 少し冷たい指先が、エドの舌を柔らかく撫でた。
 くちゅくちゅといやらしい音がして、エドは硬く目を閉じる。
 何故、いきなりこんなことになったのだろうか。
 疑問を押しやり、エドは必死に指を舐めた。
 ちらちらとロイの顔を見やり、表情を窺う。
 その視線に、ロイはそっと微笑んだ。
「もういい。」
 ずるりと指を引き抜き、ロイはエドの下着を剥ぎ取った。
 さすがにこれには抵抗する。
「ちょっ…ま…!」
「静かに…ボロホテルだから隣に聞こえる。」
 鋭く叱咤され、思わず口を閉じた。
 その間に濡れた指が双丘の狭間に潜り込む。
「ぃたっ…」
 首をすくめ、エドは唇を噛んだ。
 屈辱的だ。
 男にこんなことをされるとは。
 いくら甘えたいと思っていたとしても、こんなことは望んでいない。
 エドの内心を知らず、ロイは内側を刺激する。
 悔しいが、甘い声を堪えきれなかった。
「…ふぅ…んぁ、あ……あん…ん…」
 ぐちゃぐちゃとかき回されては、気が狂いそうになる。
 どこか遠い世界に意識が飛びそうだ。
 はじめてのことに、エドは混乱していた。
 そのエドを現実に引き止めているのは、ロイの与える痛みと異物感だった。
 しかし、それもしだいに甘い悦楽へと変わっていく。
 エドが悔し涙を流すほどに。
「やめっ…や、ぁあ…っ…ぁう……」
 震える花芯は確かに息づき、刺激を求めて涎を垂らしている。
 エドがどんなに嫌がっても、身体だけは嘘をつかなかった。
「ここは、どうだ?」
 ぐっと指を曲げたロイが、的確に前立腺を擦り上げた。
 とたんに目の前がスパークする。
「あっ…やああぁぁっ…んぅっ…」
 隣の部屋に聞こえる。
 ロイの言葉を思い出し、咄嗟に鋼の指を咥えた。
「…賢明な判断だ」
 指が抜けていき、入口が意に反してひくついた。
 エドの涙を片手間のように拭ったロイが、華奢な身体の上に圧し掛かる。
 はっとしたときには、既に両足を大きく広げられていた。
「っ…嫌だっ…そんな、いや…だ……」
 震えた声で懇願するものの、ロイは片方の眉を持ち上げるだけだ。
 やめる気配はない。
「…そんな……ぃ…ああぁっ!!」
 涙の量が増えた瞬間、ロイは無理矢理、エドの中に押し入ってきた。
 あまりの痛みに、エドの中心が萎縮する。
 堪えきれない声が部屋中に響いた。
「っああぁっ…や、だぁ……!」
 首を振り、それでも与えられる快楽に腰をよじるエドは淫らだった。
 全身が淡く色づく中で、胸の飾りと目元、そして花芯がもっとも美しい色に染め上がっている。
 エドの左手を取り自らの中心に導いてやると、酔ったようにそこを刺激し始めた。ひどく背徳的で、しかし美しい。
 既に何も考えられないほど、感じているようだ。
「ああっ…ん…ど…して……あ、やぁっ…」
 口先だけで疑問を浮かべるエドを、ロイは腰を揺らして攻め立てる。
 その度に、甘すぎるほどの嬌声が零れた。
 未熟に育った果実は震え、悦びから蜜を溢れさせている。
 それを育てているのは、エド自身だ。
 物足りないのか、様々な角度から爪を立てている。
「…んやぁっ…め…も、もう……ああっ…あ、ぃっ…」
 前と後ろ、両方からの快楽に、エドは乱れすぎるほど乱れていた。
 腰を動かすたびに、入口がぎゅうと締まる。
 内側の滑らかな粘膜は、逃すまいとするかのようにロイに絡みついた。
 ロイの内側にも、熱がこもる。
「あ…はぁ……やっ…あ、あぅっ…ん…!」
 そろそろ、追い詰めてもいい頃だろうか。
 激しく腰を使い、エドを頂上まで導く。
「…ひ…きゃぁっ…や、ああっ…んぁっ…!」
 十分育ったエドの花芯から、蜜がとろとろと零れていく。
 エドの手は、もうそこを育てようとはしなかった。
 それ程に後ろの快楽が強い。
 もうこれ以上、自ら高める必要はない。
「んん、ぁ……あうっ…ん…!!」
 エドが息を飲んだ。
 体中を一直線に快楽が駆け抜ける。
 そして次の瞬間、
「―っ、あああぁぁっ!!」
 意識が、途切れた。

 何があったのか、把握できない。
 気がついたらそこは知らない場所で、ロイの腕に抱かれて眠っていた。
「…ここ、どこ…」
 かすれる声で問う。
 ロイは小さく笑うと、誤魔化しをはじめた。
「知る必要はないだろう?それより、朝食はどうだ」
「……まずい所?」
「何がだ、料理の味か?」
「…絶対ワザと言ってるな…」
 溜息を零し、エドはロイの胸に身体を乗り上げた。
 すかさず、大きな手でロイが撫でてくれる。
 エドはうっとりと目を閉じた。
 本当はどうでもいいのだ。
 ここがどこであっても。
「…気持いい…」
 ロイの手が、エドを溶かしていく。
 氷の表面を、濡らすように。


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さすがに1日に2本仕上げるのはきついですねぇ…。
お気付きの方もいらっしゃるかとは思いますが、
訪問者のトータルがゼロからのスタートになってしまいました。
返事があるかどうかは分かりませんが、問い合わせ中です。
正直、ショック…。
皆様数値の回復に協力してくださいませ(泣)。
では。
ご意見・ご感想は以下まで。
どの小説もとてもおもしろかったです。言葉の選び方がものすごくツボです、はい。更新楽しみにしていますので、無理しない程度に頑張ってくださいねっ! byローレライ at2009-08-16 19:45:38

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